第1回宇宙園芸セミナー(2024年7月5日・戸定ヶ丘ホール)
講師 Malcolm J. Bennett 教授(ノッティンガム大学バイオサイエンス学部)
講演タイトル Uncovering how roots sense environmental stresses using hormone signals(根がホルモンシグナルを利用して環境ストレスを感知する仕組みの解明)

講演概要
植物は環境からの刺激やストレスに応じて成長や発達を柔軟に調整する能力を持っており、特に根の発達に顕著に表れる。植物が細胞間の水野流れとホルモンの移動を結びつけ、根の分岐を変化させ土壌資源の取り込みを最大化する仕組みが明らかになっている。また、根はエチレンのような揮発性シグナルを用いて土壌の物理的特性の変化を感知している。
これらの知見と単一細胞レベルでの遺伝子発現解析の先進技術の進展がストレス耐性作物の設計に役立つことを講演していただきました。
尚、本セミナーは、Bennett教授が岡崎で開催されるEMBOワークショップに参加されるために来日した機会に、本学(松戸キャンパス)にてEMBO Global Lecture Seriesとしてご講演いただきました。
第2回宇宙園芸セミナー(2024年11月15日、E205講義室)
講師 日出間純特任教授(千葉大学大学院園芸学研究院宇宙園芸研究センター)
講演タイトル 植物の太陽紫外線適応戦略機構研究から宇宙環境ストレス応答と生命維持に関する研究への展開
講演概要
様々なストレスに晒されながら生きる植物は、個々のストレスに応じた防御・適応機構を有しており、ストレスの中でも太陽光に含まれる有害な紫外線(UV-B:280 – 315 nm)に着目し、太陽紫外線UV-Bに対する、障害・修復・防御・耐性機構に関する研究を展開してきた。 このようなUV-Bに適応する機構には植物種によって異なり、近年、UV-B適応機構に関わる興味深い新たな機構を見出している。
また、これまでの研究実績を基に、「地球外環境における植物の複合ストレス応答と植物の育成技術確立」に関する研究を展開している。宇宙環境で、これまで1G環境に適応し、進化してきた植物が正常に生きることができるのかを地上においてクリノスタットを用いた疑似微小重力環境を利用して微小重力環境に加え、微小重力環境下おける太陽紫外線の複合影響を解析した。その結果を基にこれらの可能性を宇宙環境で検証するため、国際宇宙ステーション(ISS)を利用した宇宙実験「Plant UV-B」を実施している。
本セミナーでは、これまでの研究の概要を紹介いただき、今後新たな研究の展開について議論しました。
第3回宇宙園芸セミナー(2024年11月22日、E205講義室)
講師 Kim Johnson准教授 (La Trobe大学農学・生物医学・環境科学部)
講演タイトル Plants for Space – growing fresh sustainable food for Earth, Moon and Mars(宇宙のための植物:地球・月・火星で継続的に新鮮食品を生産する)
講演概要
千葉大学に大学院園芸学研究院附属として宇宙園芸研究センターが設置された2023年に、オーストラリア研究会議 (Australian Research Council; ARC)の卓越研究センターとして、The ARC Centre of Excellence in Plants for Space (https://plants4space.com/) が発足した。ARCセンター(Plants for Space)は千葉大学宇宙園芸研究センターと同様な目的・目標・研究領域をもった組織である。
Kim Johnson先生にはそのARCセンター(Plants for Space)の中核メンバーとして、オーストラリアの取り組みを紹介していただきました。
第4回宇宙園芸セミナー(2025年9月4日、E206講義室)
講師 Michelle Watt 教授 (メルボルン大学理学部、Australian Research Council Centre of Excellence in Plants for Space)
講演タイトル Root phenotypes for contained hydroponics of space and Earth(宇宙と地球の閉鎖型水耕栽培のための根の表現型)
講演概要
従来の根の機能に関する研究は土壌を対象に行われ、根や微生物群衆(マイクロバイオーム)の形質表現に関する遺伝率は約半分が土壌環境に起因し、残りは遺伝子の継承及び発現によるものであることが示されている。これに対し、宇宙や地球上の植物工場における閉鎖型水耕栽培システムでは、根の形態や機能に関する研究はまだほとんど進んでいない。水耕環境では①根の伸長抵抗がほとんどなく、側根の長さの比率が低下し、結果的に根系全体のエネルギーコストを下げる可能性がある。②土壌で提唱されてきた根の分泌物や根毛による可溶化の役割は、水耕栽培において再考する必要があり、特に根毛は酸素の取り込みにおいて重要な役割を果たしている可能性がある。③イオンを吸着する表面が少ないため、根が塩分にさらされやすい環境である。④水の供給が常に一定であるので、土壌におけるようなリゾスフェア(根圏)の境界が形成されないことが示され、水耕栽培下における根のマイクロバイオームの性質に疑問がある。⑤根の屈性(トロピズム)のメカニズムは、水耕・宇宙環境では光、水、硝酸塩、重力などの刺激条件が異なるため、未解明である。
Watt教授と出席者は宇宙や地上の閉鎖型水耕栽培システムにおいて、根をどのように適応させていくかという課題について議論しました。

第5回宇宙園芸セミナー(2025年10月9日、E206講義室)
講師 矢野幸子 先生 (宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門有人宇宙技術センター 主任研究開発員)
講演タイトル 宇宙への情熱と宇宙生物・植物実験の展望
講演概要
日本は国際的にも有人宇宙開発の重要な一翼を担っている。宇宙環境が生物に与える影響を調べるためイモリやメダカなど小型の動物を使った宇宙実験がクローズアップされる中、1998年にはスペースシャトルSTS-95を利用して植物の芽生えを用いた生育実験が実施され、その後の国際宇宙ステーション(International Space Station, ISS)実験の基礎となる大きな成果を上げた。さらにISSで得られた成果をもとに、月面を想定した植物栽培の研究も行われる時代になった。
本セミナーでは、ISSの日本の実験棟「きぼう」での宇宙実験を概要し、将来の長期有人探査時代に必要な技術開発、また月面や火星での活動まで、長期的視点に立つことの重要性を、情熱を交えてお話しいただき、遠い未来だった世界を現実にしていく実際の作業とさらなる将来展望を解説していただきました。

第6回宇宙園芸セミナー(2025年12月5日、E103講義室)
講師 石崎 公庸 教授(神戸大学大学院理学研究科 教授)
講演タイトル 新規作物ゼニゴケを宇宙食に!
講演概要
長期有人宇宙探査には、CO₂を吸収し酸素と有機物を生産する植物栽培技術が不可欠である。従来の作物は水や資材、スペースを多く必要とするため、我々は省資源・省スペースで栽培可能なゼニゴケに注目している。ゼニゴケは根や維管束を持たず土壌不要で、全体から水分と養分を吸収し平面的に成長する。成長が速く、低照度でも繁殖し、無性芽による効率的なクローン増殖も可能である。必須アミノ酸やビタミン、EPAなどの脂肪酸を含み、レタスのような食感で全体が可食部という特長も持つ。
本セミナーでは、気相栽培システムの構築と分子育種の観点から、閉鎖環境に適した栽培植物としての可能性を紹介していただきました。

第7回宇宙園芸セミナー (2026年4月22日、E102講義室)
講師 小川 健一 先生 (岡山県農林水産総合センター生物化学研究所グループ長)
講演タイトル 植物の生産性を高める-基礎研究から社会実装までの道のり-
講演概要
100年以上前に抗酸化物質として発見されたグルタチオンが植物の成長調節機能を有することが発見された。今日、グルタミン酸は様々な植物成長促進剤として市販されるようになった。
本セミナーでは、発見から社会実装に至るまでの過程の研究の苦労話を交えながら、今後の展望も紹介していただきました。

第8回宇宙園芸セミナー (2026年5月25日、E205講義室)
講師:Harvey Millar 教授(ウエスタンオーストラリア大学 教授)
講演タイトル: The challenge of watering salad leaves for optimal growth in microgravity: analysis of Advanced Plant Habitat studies of lettuce on the ISS by leaf and root proteomics(微小重力環境でのサラダ菜の最適成長のための給水の課題:ISS(国際宇宙ステーション)でのレタスの葉および根のプロテオミクスによる先進的植物生息地研究の分析)
講演概要
2024-2025年に国際宇宙ステーションの’きぼう’実験棟でNASAの植物栽培装置Advanced Plant Habitat (APH)を用いて実施したレタスの宇宙実験の解析結果についてご講演いただきました。
